空席がない。ひっそりして、皆何か読んでいる。新刊雑誌にまじって外国雑誌もテーブルの上にある。
 読書室の向いの戸は開かない。――一年前「ゲルツェンの家」にあった光景とこの光景との違いはどうだ! ソヴェトの、逆転することない歴史的飛躍が颯爽と現れているではないか。
 だが、たった二年の間に、どうしてソヴェト文壇の空気は、これ程大きい清掃をやったか?
 ソヴェト社会の客観的情勢が、最近二年間に、実にかわった。それに応じて、ソヴェト文壇の指導が従来の「同伴者《パプツチキ》」作家団体から、完全に、「ラップ」=ロシア・プロレタリア作家同盟へ移った。これが、大きい原因だ。
 では、その客観的情勢の変化そのものは、どこから来ているのだろうか。
 目下、ソヴェト同盟が第三年目に入った生産拡張の五ヵ年計画によってだ。今日のソヴェト同盟内に起るどんな小さい社会悲劇も喜劇も、この一九二八・九年から三三年に亙る五ヵ年計画の偉業ときりはなしては説明出来ない。
  * このプラカートの欠字は一九四八年の今日うずめることができない。

       「五ヵ年計画」

 これまでも、ソヴェト同盟で生産は計画的に行われ
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