なった。
広い前庭だ。
太い柱列の間の入口から、立派な石の正面階段を昇ってゆくと、左手の柱に喫茶所[#「喫茶所」はゴシック体、枠囲み]と札が出ている。さっぱりした小テーブルと、腰かけがある。通りぬけると奥は一般談話室だ。
狭くなった廊下を出ると、左手に浮彫つきの堂々たる扉がある。ソログープのための相談、指導部だ。「集団農場における作家」展覧会委員室もある。
広間では、一月《ひとつき》のうち順ぐりに、映画研究会、劇研究会、作品研究会、評論研究会などが持たれる。そして、われわれはそこに見る。赤いプラカートを。
[#ここから4字下げ、枠囲み]
階級の武器としての芸術を××××××[#「××××××」に「*」の注記]化しろ! 社会主義建設のために、党の線によって、進め!
[#ここで字下げ、枠囲み終わり]
ここはソログープの書斎だった室だ。が、諸君、ここの戸はごくソーッとあけなければいけない。クラブ読書室なんだから。
茶色に塗った貴族的な本棚が壁をふさいでいる。レーニン全集。マルクス・エンゲルス全集。資本論。いろんな経済学術雑誌などが整理されて本棚はギッシリだ。大テーブルのまわりには
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