に陥った。しかも、作者は、そういう個人的な心理穿鑿をまるでくどくて飛躍のない、眠ったい自然主義的な手法で叙述しているのだ。
リベディンスキーは、この「英雄の誕生」において、生物としての人間が社会的な[#「社会的な」に傍点]階級人として成長をとげた歴史的な現代のソヴェトでは人間本能=性的慾求、食欲、知識欲という諸要素をどんな自主性と社会的見とおしで処理しようとしているかという事実について初歩的な理解と共感さえもっていないような態度を示した。
リベディンスキーは、「英雄の誕生」の弁明において云った。自分は、この作で、全然新らしい社会的結合としてのソヴェトの家庭の意味を書こうとしたのだ。ソヴェトにおいては家族制度の問題や、家庭内の男女同権の問題はもうすんでいる。男と女とが同等なもの[#「同等なもの」に傍点]として結合したところから発足して、子供を育てるということにソヴェト家庭の持つ全然新らしい意味を捕えようとしたのだ、と。
けれども、この云いわけは、リベディンスキーが連載した小説そのものが曝露している誤謬を訂正しまい。何故なら、リベディンスキーが男と女とが同等なものとして結合する、とい
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