ィンスキーが「射撃」と全く反対な立場で執筆している「英雄の誕生」をもって現れた。ソヴェトの大衆と文壇が注目したのはあたりまえだ。
「英雄の誕生」の主人公は、ボルシェビクである古い党員で、革命のよい働き手だった。リベディンスキーは、この党員の私的な家庭生活を主題にとった。よい同志であった妻の死後、主人公は、その妻への愛と一人息子への愛のために久しい間独身生活をつづけて来た。彼のところには妻の妹が家政婦のようにして一緒に暮している。主人公の党員は彼女に対して女としての関心を一向感じず何年も暮して来たのに、或る日、その妹が髪を洗いかけて、乳房を出している姿を偶然見た。
党員は急に魅惑された。党の仕事机に向っていても、その義妹の胸が目さきにチラつく。眠れない。苦しい。死んだ妻にすまなく思う。等々、大いにそのもだえを持ちまわって、遂に義妹と性的交渉をもつようになる。しかし妹は同志ではない。ただの家庭的な女だ。党員は不満になる。ピオニェールである彼の息子が、父親のそういう家庭生活を批判する。党員は、到頭、どっか遠い地方へ出張してしまう。そこで連載が中絶した。というのは、実にすさまじい大衆の批判が
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