。例えば、彼に詩劇「射撃」という作がある。ソヴェト五ヵ年計画開始とともに、或る電車製作工場に生産能率増進のウダールニクが組織され、若い男女のコムソモールを中心とする工場内の自発性《イニシアチーヴ》が、どんな階級的闘争を職場で経験したかという歴史を扱ったものだ。
「射撃」の主題は、再建設期のソヴェトの現実からとられている。それはよろしい。「ラップ」内で問題になったのは、その活きた社会的主題を、ベズィメンスキーがどう解釈したかというところにあった。
 ベズィメンスキーは、工場内のウダールニクと妨害分子とを、単純に赤色の善玉悪玉式に対立させた。階級的悪玉は、はじめっから終りまで悪玉。善玉の方はと云えば、どんな小さい誤謬も犯すことのない綱領的な存在として、「射撃」の中に描写されているのだ。「ラップ」はその点に現れているベズィメンスキーの非現実的な機械的党派性を指摘した。
 職場のウダールニクが、妨害分子の中に必ずまじっているに違いない中間的なフラフラ分子の中を、出来るだけ建設戦線へ引きこんで、捏《こ》ね直そうと努力してない「射撃」の描写は、非現実的だ。党はウダールニクに、そんなセクトの戦術は指
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