的推移の諸現実が、文学によって再現されるべき特殊性なのだと。――
 五ヵ年計画は、農民作家たちにとって画時代な経験としてあらわれた。
 ところが残念なことに、「同伴者《パプツチキ》」内の或る作家が階級の敵としてあらわれたようにこの農民文学の陣営からも、小さくない敵が発生した。敵というのは「工業化主義者の職場」という全露農民作家協会内の一味だ。
 農村における五ヵ年計画の根本は、生産手段の工業化だ。人間の手足と、馬と木の鋤を耕地からなくして、トラクターで耕し、蒔き、苅入れようというのだ。集団農場化は工業化を基礎としないでは成立しない。この一味の名称は一見いかにも階級的で、五ヵ年計画の課題にこたえているようだ。
 そこが手だったことを「ラップ」は発見した。革命的な、左翼的スローガンをかかげ、この「職場」に属す作家たちは、段々「ラップ」と党の文学的組織の中へ潜りこんで来ようとした。潜りこんで戦線を乱し、文学的運動を通じて農村における集団化の仕事を擾乱し、農民を反ソヴェト的団結に導こうとする計画だった。政治的な面ではブハーリン等を中心として農村の集団化をさまたげている反革命の分派が、農民の文学
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