、メイエルホリドらしい、群集の心理激動の描写をやる。
仕事着を着たチュダコフ(プロレタリア大発明家)と数人のその仲間の動作は、常に綜合的にリズミカルに統一され、チュダコフの発明した何かの機械は、舞台の上へは形を現わさない。発明家とその同志が、手を組み合せ、大事に、重そうに、やっこらと物を運ぶしぐさでだけ暗示的に表明される。
大詰は、社会主義国の首府から迎えの飛行機がやって来る。飛行機は、未来のアメリカの屋上着陸所みたいな高い高いところで止っているのだそうで、見物席からは見えない。銀と赤の飛行服をつけて上空からやって来た、中央からの婦人使節スワーボダに率いられて、チュダコフ一隊はその飛行機に向って、舞台中央に組み立てられたヤグラを一段一段と高くよじのぼってゆく。くっついて社会主義首府へのりこもうとした俗人、反社会主義的人間は、ひどい爆音がして煙が立ったと見ると何か科学の力できれいにヤグラから舞台の下へ落っことされている。あれよあれよという間に、社会主義の首府に向って、飛行機は飛び去り、芝居は終るというわけである。
マヤコフスキーの科学力に対する翹望と愛好は「風呂」で一層率直に示され
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