か?
 五ヵ年計画とともにプロレタリア芸術が獲得しつつある唯物弁証法的な、リアリズムとメイエルホリドのややこけおどしの気味がなくもない様式化、そこにあるエクゾチシズムや誇張性とはどういう関係で発展するものだろうか。現代のソヴェト大衆が実感している文化の生活的な現実性と、その演劇的な表現者であり、鼓舞者であるべきメイエルホリド劇場のもっている特色とは、どういう関係をもっているものだろうか。メイエルホリドの「本当の道」がまだはっきりきまらないという理由は、ここにある。

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       「南京虫」
       「風呂」   マヤコフスキー作

 この二つはメイエルホリドが、一九二八年・三〇年のシーズンにつづけて上演した、最初の、五ヵ年計画に関係をもつ脚本だ。
「南京虫」は、現在のソヴェト生活に、決して珍らしい虫ではない。南京虫と同様に、飲酒、喫煙、官僚主義、恋愛からの自殺も、決して珍しいものじゃない。
「南京虫」の第二部は、五十年後のソヴェト社会の場面である。前時代の遺物として南京虫が、たった一匹標本的に棲息をつづけている。舞台へ、つくりものの巨大な南京虫があらわ
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