ェトで、オペラは、過去からの遺産というはっきりした観点から扱われている。ソヴェトの新しい音楽家は、その大きな遺産をどう利用し、社会主義的な社会の感覚にふさわしい新形式へ進めるかという点で、大きな課題を与えられているわけなのだ。
 第一国立オペラ舞踊劇場でも、オペラの長い幕間には、本を出してよんでいるソヴェト市民男女をよく見かける。
 バレーの「フットボーリスト」では、その扱いの失敗の典型を見せられたが、ソヴェトのオペラで感服した一つのことはオペラ舞台では、演劇的に群衆が集団の力の表現として生かされていたということだ。
 これはスカラ座のカルメンの舞台群衆と比べると直ぐわかる。
「ゴトブ」も、こけおどしめいて大群集を色彩豊かに舞台の上に並べたてるが、その一幕の中心となる情景に向って、数百人の人間の動きを統一させ、照明とともにあくまでもテーマに即した感情表現・姿態をさせている。主役の補助、舞台効果の奥ゆきとしてつかっている。これは、オペラ特有の大きく賑やかな舞台の上のゴタゴタを整理して効果がある。「ボリス・ゴドノフ」にしろ、新しい舞台装置とこの群集=合唱団の巧みな扱いかたで、新鮮さを出して
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