古いことだが、プドフキンが映画の「生ける屍」で主役をやったことがあったね。監督も自分だったろう? するとどうなるんだろう。両方分で千何百ルーブリか?
 ――さあ、どうなるんだろう。わからないな。そういう場合は。――だが、こんなこともあるよ、エイゼンシュテインが「戦艦ポチョムキン」を撮影した時、老いぼけた坊主が十字架もって出て来るんだ。反乱が起って坊主は勇敢な水兵に追いこくられ、艦橋《ブリッジ》からころげおちるところがある。エイゼンシュテインのことだから、ほんとに、老いぼけてひょろひょろな坊主見つけて来たんだって。いざ、高いところからころがる段になって、骨があぶないってわけさ。本物ではね。エイゼンシュテインが、直ぐ坊主の装をして、俺が落っこちてやるって、簡単にころがりおちちまったんだとさ。
 ――無料で、ころがりおちまでした例だ。
 ――ハハハハ、さっぱりしているな。ところで芝居の話へ戻るんだが、職業組合に入っている勤労者は半額で見られる。お前みたいな外国人はどうするんだ?
 ――芝居の窓口へ行くのさ。そして、その日の、または前売切符を買う。一九二八年頃、おもだった売場にある案内所が切符
前へ 次へ
全55ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング