在じゃこまる。出来るだけ大勢の労働者に芸術をわかち、出来るだけ一枚ずつの切符の値段は下げなければならない。劇場の建物がこの目的とは逆につくられている。五ヵ年計画の中に、大劇場建築計画のあるのは当然なんだ。
 ――どの位するかい? 切符は。――
 ――場所によるが、五十カペイキから六、七ルーブリだ。
 ――間に段々があるんだろうが、高いな。
 ――高い。ソヴェトも断然それは認めている。だから、これまでだってやすくすることに一生懸命んなって来た。舞台装置に金をかけるな。無駄に手をふやすなって、メイエルホリドは、知ってる通りの凝りようだから。どうしても舞台装置に金をかける。それで叱られたことがあったそうだよ。
  そうそう、メイエルホリドで思い出したが、エイゼンシュテインがアメリカでデマをとばされて、つかまったってね。ああいう映画監督の俸給どの位だろう……いくぶんゴシップ趣味だが……
 ――待ってくれ、虎の子を出して見るから、こりゃ多い。七百五十ルーブリだそうだ。映画俳優のところも見て御覧、ついでに。主役で三百ルーブリから六百ルーブリだ。一寸エピソードへ出るのが百五十ルーブリ位。――
 ――
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