割合で払えばいいことになっているんだからな。
――そうかい! そりゃききものだ。どの産業の労働者も、家賃なんか、そういうやりかたで払ってるのか?
――見ろよ! お前だってムキになって来ただろう。
――ふーむ。
――お前みたいなピーピー銀行員なんか勿論そうだよ。
――ふーむ。……
――ひどく、うなるじゃないか。この例一つで、おれが社会主義の宣伝をしているんでないってことは、はっきりしたさ。社会主義の現実がみんなにおしえるんだ。資本主義とどうちがうかってことを。――
――こうなっちゃ、いよいよきかずにすまされないよ。ところでね、そういう劇場だって、運転資金となる利益は矢張り切符のうりあげだろう?
――そうだ。が、全部ではないよ。ソヴェトの劇場は、松竹御儲けのためにあるんじゃない。本当に大衆の楽しみと文化向上の目的をもって建てられている。だから各劇場は毎日、全座席の中の一定数を必ず各職業組合と赤軍(劇場の種類によっては学生)のために、呈供している。半額と無料の切符を出しているのだ。
モスクワのメーデーは、あの賑やかさと、全市に翻る赤旗の有様だけでもほんとに見せたいようだが、
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