英語だ。しかも、フランスは旧教の国だから、「アジアの嵐」のなかの最も皮肉で愉快な場面、よだれをたらした赤坊のラマに帝国主義国の将軍が勲章をつけてお辞儀したり、おべっかつかったりする場面、反宗教的な場面をあらかた切ってしまってあった。暖いぷかぷかな場席へ、所謂シークなパリの中流男女、金をつかいに来たアメリカ女が並んで、ソヴェトから買って来て骨をぬいた「アジアの嵐」を観ている。仏領インド支那の農民が反抗すると、フランス政府は瀟洒な飛行機から毒ガスを撒いて殺した。だから原作のままの「アジアの嵐」なんぞ上映することを許さないんだ。日本だって、あの作品や「トルクシブ」は「思想善導」されてカットされているんだろう?
ソヴェト映画だからって観る側としては無条件によろこべないんだ。
――それは相当みんな勘定にいれて見ると思う。ソヴェトじゃ映画製作は、計画的生産だってきいたが、そうか?
――鉄、石炭、麦、靴のような消耗品に至るまでソヴェトはすべての生産を計画的にやっている。映画みたいな芸術的生産も大体一年に何本、どういう種類のものをつくると予定してやっている。
――芝居の方はどうなんだ? キノ
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