ソヴェト「劇場労働青年《トラム》」
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)劇場労働青年《トラム》
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一九三〇年の初夏、レニングラードから「トラム」劇団がモスクワへ興行に来た。その「トラム」劇団と云うのは皆何年か実際職場で働いた経験のあるコムソモール達に依って組織されている劇団だ。初め各々が演劇好きで倶楽部の演劇研究部のメンバーとなり、勉強して祭の日に倶楽部の芝居へ出演したりしていた。ところが段々専門化して来て色んな工場から何人かそういう連中が集まり、コンムーナ(共産制の生活様式)で話すようになった。MOSPS(モスクワ地方職業組合ソヴェト)劇場の教育部に指導されてメキメキ発達した。レニングラード・トラムはもう劇場をもっている。モスクワの方は劇場を持っていないが郊外にあるコンムーナの家で厳格な稽古、政治的な勉強をやりながら活溌に移動演芸団として多くの倶楽部を廻って皆を喜ばしている。その時「トラム」は革命劇場でやったが偉い人気だ。吾々なんか二度も切符を買いに行ったが、売り切れでやっと三度目に這入《はい》れたという有様だ。その時の上演目録はコムソ
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