モールのコンムーナを取り扱った陽気なオペレットと五ヵ年計画に於ける農場の集団化を主題としたドラマだった。オペレットの事だから筋は割合他愛の無い物だし、歌がどっさり這入り陽気にやっているらしくは見えるが全体に漲るユーモアまたは恋愛的な場面の表現の仕方などには、これまでのソヴェトの劇場の何処もが把握する事が出来なかった新鮮な新ソヴェト気質が輝き渡っていた。俳優がまるで新らしい様式と生活内容で育っているから殆ど、彼等自身意識していなそうな若々しさがある。トラムのそこが値打だ。観客はそのオペレットの時なんかは実に大喜びで、幕合には革命劇場中賑かな歌の声で響き渡った。オペレットの音楽が極く大衆的な、単純で可愛いい要素で作曲されているので、若い連中は見ている間に歌を覚え、早速その合唱という訳だ。農村の集団化を扱ったドラマでは中農の息子と貧農の息子との階級的対立が、大きい社会的背景の前に非常によく写されていた。こう云う主題はこなすのが仲々難かしい。五ヵ年計画と共に幾つかその種の脚本が書かれた。例えばカターエフが「前衛」を書いて、それをワフタンゴフ劇場が上演した。だが「前衛」は階級的闘争を個人的な感情
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