育ってしまってからはよく分らないから、そこに教育部というものがあって、そこへ私が行った時に会ったのは、白髯の爺さんで、かれは何年も児童教育、児童心理学を勉強している人だったが、かれが主任で芝居がすすむにつれ子供がどこへ行ったら笑ったか、それが何分続く、それからどれだけ笑って、やがて退屈し始めたかという、そういう心理的な統計、それを皆んなとっている。
 だから、つまりその脚本の心理的な成功、不成功というものがよく分る。それによって児童教育に対する心理的なリズムというものをはっきり研究して行く。そういう点は非常に興味がある。それからそこへ子供は非常に安く入れる。二十カペイキの金で、或は全然只で学校から団体で連れて行く。各小学校が順繰に……。その上その見た印象を絵に書いたり、文章に書いたりして、教育部がそれを集めている。そしてそれがどんなものが子供に印象を強く与えたかという参考になる。
 私が見た時は、「印度の子供」というのをやっていた。それは殖民地の問題で、植民地でどんなに印度人がイギリス人に圧迫されているかということを知らすと同時に科学の力、智慧というものが人間の生活を便利にして行く、そ
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