た、子供の劇団というものを一つももっていない。あれだけの組織をもっていながら、資本主義の演劇ばかりやっていて、だからたとえ人気取りのため、社会主義的な脚本を上演するとしても、それはどこまでも社会民主主義的立場で、それで自分達が切符を沢山売って、利益を得て行くというだけの問題である。
 だけれども、ソヴェトでは演劇も、キノも、音楽も皆本当に民衆のもので、民衆の喜びのために、民衆の文化の向上のために、民衆自身が自分達の感情をそとへ表現するために、芸術教育も、それから職業的な芸術団体もあるわけである。
 ソヴェト・ロシア文部省の芸術部がそれを統轄して、演劇の上演目録審査委員会というものがある。そうしてシーズンが来て――秋から翌年春までのそのシーズンに、どこの劇場ではどれだけの上演目録をどういう順序でやって行くということをそこで決定し、脚本の選択をしてやって行く。労働者及び勤め人、そういうものは自分達の職業組合を通じて切符を半額で貰う。或る場合は全然只で貰う。
 それで劇場は必ずいつでも何割かを職業組合のために場所を取っている。あとの我々みたいな外国人は、窓口へ行って、そこに書いてあるだけの金
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