庭を城にして、それで浮世の荒波を防ぐというものではない。社会というものの上にある一つの小規模な連帯責任を有っている団体、そういう家庭で、おやじの身になっても、自分が死んでも社会が子供を保護してくれるという安心のある方が随分安全である。本当に安心して生産に従える。
 また生活の安定ということに対しては、ソヴェトの社会主義を建設してゆこうという方向に自分も賛成で、そして忠実な勤人であり、或は労働者であるならば、日本の何よりも安定である。それは個人関係で保護されているのではなく、職業組合、労働省の法令、いろいろなもので組織されて保護されているから、非常に安全率が高い。第一組合の中で、或る労働者に対して一つの間違った処置があると、他の労働者がこれに対して自分達が有っている権利を適用し、間違った処置をされると自分達の問題だから、周りが黙っていない。いろいろな問題を提議するから、割合にそういう点は安心である。
 例えば労働者を解雇する場合、工場の生産の低減をしなくてはならぬ已を得ない場合、労働者が工場に対して窃盗を働いた場合、それから三ヵ月以上収監された場合、そういうものは無断で解雇してもよい。そ
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