以て、社会人としての義務をお互に果して行く家庭は勿論鞏固に発達している。が、普通の概念に於ける家庭というものはない。つまり我々が眼にしている普通の家庭というものは、家長はおやじ。それでおやじが家族のお母さんや子供の世話を見る。おやじが一旦死んで、財産がなかったら親類の世話になる。家長というものに絶対責任を置いて、死んだら子供が路頭に迷う。それがつまり全然私有財産制度の下にある家庭である。
 けれどもソヴェトでは、亭主は一人の労働者として、失業保険を有《も》っているし、また健康保険もあり、養老保険もある。それから家族があれば、家族に準じたパーセントでそういうものを増し受ける。また子供が学校に入ると……或る専門学校に入ると、卒業までには一人前の技術者、労働者として職業組合からの保護を有っている。そこで親子互に独立した労働者としての社会的保護を有っているわけで、これは全ソヴェト市民の権利です。だからそういう人間はおやじにたよらずに、また子供にたよらずに暮せる。
 だけれども好きな同士だから夫婦になって一緒に暮す。子供はおやじや母と一緒に暮した方が幸福だから一緒にいる。だから外の国でのように家
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