てしまいます。
 又もう一方の場合では、只さえ、今の煮え切らない箇性の乏しい、我国の女性に同情はしながらも、その解放の為に叫びながらも、衷心の不満を押えられないで居る男子が、兎に角、自分というものを持って、ピチピチとはねる小魚のように生きて居るこちらの婦人は、満たされない或物を同様に満たす或物を持って居るのは争えない事実でございましょう。
 自分の夫人でありながら、自分の仕事には一向共鳴を感じてくれない自分の人。魂を激しい愛――愛と云うものを理解した愛――でインスパイアしてくれるどころか、只怠いくつな寄生虫となって、無表情の顔を永遠の墓場まで並べて行かなければならない――。
 其は、女性である私が考えてもぞっとする事でございます。人間として、悲しむべき生活ではありませんか。従って、自分の生活はそうでないにしても、周囲の多くの事件に、其う云う歯がゆさを感じて居る人が、驚くべき力を以て、こちらの婦人の讚美者となり、憧憬者となるのは無理もない事でございます。
 そう云う、各自の意見が異るところへ、こちらへ来た人々の生活は、一面から云って殆ど悲劇的な状態にあるとも申せましょう。
 家庭からは引
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