見ようと存じます。
 此の自覚と云う文字は、非常に広大な発展の基礎に成って居ると思います。人、及び女として自ら覚めた者こそ、始めて、彼女が人類の一員として奉仕すべき自他の関係を発見し、其に処する力を与えられます。先ず女人として深く力強く呼吸した彼女等が、社会の有機的存在の一員として、人格の独立の為に要求し把掴したのが、法律的並びに政治的権力で、其等を可能ならしめる為に、経済的自覚が著しく日常生活に複雑な影を投げて居るのでございます。
 然し、私共は、先ず何の為に此等の諸権能の享有と云う事が要求されるかを考えて見なければなりません、又何の為に其等が賦与されるかに就ても考えて見なければならないのでございます。此等政治的法律的権利を保有して社会生活の当面に人格的独立を宣言するのは、人格力のよりよき発展とより価値ある生活への誘導を、向上を宣言したと同様の事でございます。人格者としての一女性が、人類の希願へ、何等かの光明を投ずべく、其の自由な活動を可能ならしめん為に、其等社会組織の要とする諸権利を獲得し、又仕ようとするのでございます。喧しい婦人参政権の要求も、若し其が、単に男性が所有して居るのに
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