真珠だ。」と申すかも知れません。
そうでございましょう。私は厭でも、大多数の女性が、彼女等の生命に無残な殺戮を加えて尚平然として居るのを見ます。けれども、其の原因をもう少し深く考えないでよろしいのでございましょうか? 教育者の或者は、自ら女性の為に叫ぶべき位置にありながら、利己的保守を致します。女性が私の最も厭う「私は女だから」と申す遁辞に巣喰う事を奨励致します。教育者が、小学校時代から、女性を性的生活以外の範囲に踏み出させない狭隘な教育の※[#「木+窄」、読みは「しめ」、163−4]木に掛けて、憐れにも生気を失った青年女子を育て上げて置きながら、其に向って、其那お前は価値が無いと冷酷にも批判するのは、余り無思慮ではございますまいか。男性が長い間の内に女性に加えた圧迫は、彼女等の発達を阻止して仕舞いました。其でありながら其の原因を蒔いた者が、女性の無智を侮蔑するのは、丁度自分の背後を自らの剣で刺すようなものではございますまいか、恐るべき因果でございます。女性が無言の裡に流した涙を今は男子が、愛すべき価値、信頼すべき伴侶を見出し得ない苦痛に依って流さなければならないのでございます。私は
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