ば、若い人達は、如何にも可愛いが好きではないということになります。
 実際、所謂女仲間に入って見ますと、私などは、かなり出しゃ張りの方でも、その絶え間ない早口と、戯談と寸刻もじっとして居ない態度とは、神経を気の毒なほど疲らせてくれます。
 女の人の寄宿舎などは、まるで、今海から上げた大漁の網そのままの活々しさでございます。踊るもの、かけるもの、キーキー云ってふざけるもの、声高に座談をなげ合うもの、命が躍って、躍って、止途もないというようなのが女の人、ことに若い人の通用性でございます。絶えず興奮して居ります。
 静かにしんみりと話すことは少くても、笑うか、喋るか、歌うか、動くか致します。
 其は勿論活動的であり、積極的であるからでもございましょう。がその一つの原因は、絶間ない刺戟に彼女等の神経が追い立てられて居るのでございます。
 うなりを立てて廻転する大都会の車輪の一端に、辛くも止まって居る微細な神経は、過度な刺激で或程度にすりへらされて居ります。
 そのすりへらされた神経に与える変化は、どうしても濃厚なものでなければなりません。生活に疲れた頭は決して、低声の雑談ではいやされません。

前へ 次へ
全64ページ中25ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング