するものでございましょう。
 若し彼女が自身の力さえあれば、どんな大きな邸宅に百人の従僕を使って暮す事が出来ると倶に、どこかアパートメント只一つの部屋をかりて、男のような服装で暮したとて、誰も、其を非難したり変更させたりするものはございますまい。皆、各自の力でございます。箇性が、彼女等の全部を支配して居ります。日本のように絶対の親権もなく、彼女の魂まで自分の暴威に従わせようとする憎むべき良人の下で、光栄あるべき「女性」を殺戮されないでもすみます。
 其故、こちらの婦人の生活を批評しようとしても、其処には殆ど無数の差別が必[#「必」に「ママ」の注記]される訳なのでございます。
 数多《あまた》の人種が、混り、殖民化の歴史を持って居る国の女性としては当然な事でございますでしょう。が、先ず大体三つに分けて見ましょう。
 そうすると、
 第一は、思い切り保守的な、宗教的な婦人と、
 進取的な、努力的な、従って標準より、より知的であると倶に芸術的である婦人。
 第三は、良人から与えられる金を当然の権利として、彼女の意のままに消費する群、つまり流行の偶像であり、香油と白粉の権化であり、良人の虚栄の
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