敬と理解、同感を持ち得るのではないでしょうか。
私は暖い篝火の囲りに円座を組み、神代の人達が、一日の行業について、各覚えた何ものかを語り合うように異った境遇、個性によって得たところに就て語り合いたく思います。
二
人間の生存過程を、学として研究し或る法則、類別を見出す心理学者、生理学者等は、各個人の運命的な時期、年齢を、青年期、更年期と大別しているようです。
青年期は、十六七歳から二十二三歳迄、更年期は丸四十三四歳乃至五十一二歳。丁度、美術愛好者が、古代ギリシャ建築の明美な柱列《コラム》を見た時、心を打れ、何はともあれ、アカンサスの葉で飾られた精緻な柱頭《キャピタル》と、単純で力強い柱台《ベイシス》とに注意を向けた如く、学徒が、狂暴な程、雑多な原質の目覚める青年期、不思議に還元的色彩を帯びる更年期を特に著しい二焦点と感じるのは、まことに興味をそそることなのです。
けれども、各個人の実際の内省によると、必ずしも一般論の上から危期とされる時期が自己の運命には、さほど重大さを持たなかった場合もあるらしく見えます。却って、学理などの一向|挙示《メンション》してい
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