てひたすら発育して自己の肉体、精神の内感のみによって、宇宙に満ちる時の推移を直感するほど、深刻であるでしょうか。それほど迄に、切実に人類の全生活、運命に即した敏感を持っていましょうか。
云うことを許されれば、時の概念は、余り皮相的にあまり抜け目なく、地球の面に割りあてられすぎました。さながら碁盤の目のように一つの石、人間が動けば必ずどこかの筋目に入らないと安心しない。四角のどの目にか入れば入ったという事実そのものがさも意義あることらしく、咳払いをする。
極言すれば、私共の生存が、時で計られるのを全然忘れる必要があると思います。社会の歴史から客観すれば、或る個人がどの時代に生きたということは問題になっても主観としては、これ等の知識からまるで放たれ、もっとももっとも朴直な而も純な太古の心を以て、わが宇宙をわが愛で認識し、整理してこそ甲斐があると思います。もっと無邪気に、雄々しく個人と人間全部のアタッチメントを感じてよいと思います。
そこに於てこそ、自分が苦しみ、悦びしつつ経て行く生活過程に絶対無二な意義を感じ得るとともに、近くは親同胞、配偶者、あらゆる友、生きている者全部の営みに、尊
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