わたしたちは平和を手離さない
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)[#地付き]〔一九四八年八月〕
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 人間の社会には、その事実なり、その言葉なりをねじまげたり、もてあそんだりすると、結果として不幸がもたらされる以外に、どんないいこともない事柄がある。愛がその一つである。正義もそういう本質をもっている。それから平和が。
 ポツダム宣言が受諾されて日本の人の声々のなかに、戦争を悲惨とし、平和と自立とを愛するひびきがきかれるようになってから三度目の八月十五日が来ようとしている。
 わたしたちは日本で特にいちじるしい戦争挑発の雰囲気の中でこの八月十五日をむかえるのである。くりかえし改めて、日本のすべての誠実な人々は、戦争そのものはもとよりのこと、戦争挑発のすべての言動を絶対に好んでいないし、それを拒否していることを明瞭にする日として。
 八月十五日は、まだ日本で平和の確保された日としてあらわれていない。平和を守るためには、具体的に平和を破壊しつつある根づよいファシズムの作用の一つ一つと、わたしども一人一人が
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