わからないこと
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)愛重《アドレイション》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)近く夏目漱石[#「夏目漱石」に傍点]、
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時々考えると疑問になることがある。それは、男性の創る芸術的作品――文学でも美術でも――の中には、夥しく女性に対するアドレイションが表現されている。それだのに、女性の作品には、何故同じような男性に対するアドレイションが現されないのだろう、と云うことだ。
勿論女性に対する愛重《アドレイション》といっても、現わされる形は多様で決して中世の騎士的崇拝、または宗教的霊化に限っていない。チェホフのような態度、モウパッサンの視野、ストリンドベルク、ゲエテ、イプセン、片仮名でない名で見出せば西鶴、近松、近く夏目漱石[#「夏目漱石」に傍点]、皆、それぞれのテムペラメントに従って、女性を愛している。或る者は、幾分当惑げな寛大さと興味深げな観察眼を以て、或る者は、女性の盲目的な熱情、素晴らしい肉体、小さい頭に絶望的な腹立ちや、驚歎や悲しみ、同情を感じながら。ルノアルの描く女性は何と
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