い綜合的な発動である性質上、めいめいの生活の中で敏感に時代を反映せざるを得ない。今日という時代の歴史性に結びつけられているそれぞれの人の、固有な傾向や発展の特長また転落の道行きを物語るのである。
人それぞれに、自分の恋愛生活、結婚生活に対する何かの不安、疑問、確信の欠如があるから、何かその間に均衡を見つけ出せるような理窟、考え方、或は単なる処しかたでもないかという欲求が、恋愛論の炉へ旺に薪をさし加えるのであろう。一方には、知性の抑圧せられ勝な息づまる世態への反撥、人間性の主張の一つの形として、肉体的にも精神的にも強く逞しい恋愛の翹望が存在している。これは、磨ぎ澄まされ偏見を脱して輝く精神力や、それを盛るところの疲れを知らず倦怠を知らない原始生命的な男女の肉体を予想し、一部の人の間にローレンスの作品等がもてはやされるロマンティックな空想の素因をなしている。
私の疑問というのは、恋愛論の要求は何かの意味で社会的なものなのであるが、それをとりあげ、座談会に出席し、或は執筆している人々の態度が、これ迄幾度か恋愛の問題について論じられた時より一層個人的に主観的に立てられているのは、どういうも
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