ネ、そうすりゃあいいんだもの下らない事考えっこなし……」
「ほんまに……考えん方がいいのやけど、わての仲ようする人は皆早うどこぞへ行ってしもうたりどうでも別れにゃあならん様な人ばっかりやさかえ、妙なと思うてナ、それだから私が又あんたもと思うのや……」
なりに似合わないシンミリした声でお妙ちゃんは云って居た。こんな人達にあり勝な何となくうきうきしたパッとしたとこは少なくてしんみりと内気な娘と話して居るのと少しもちがった事はない。
「貴方割合にうち気な方だ事どうしてでしょう?」「そうやナ、だれでもそう云いやはるさかえ自分でもなぜやろと思うとってもわからんさかえ……母はんもよくして下はるし皆可愛がって御呉れやはるけど…………生れつきやろ、キット……でもいいワナ、あんたさえしっかり覚えて御呉れやはれば……忘られそうに思われてならんのエ」「どうしてそんな事思うの? おやめなさいよ、キッと忘れやしないから、私死ぬまで覚えてるわキット、若し死んじゃったらその後の事が覚[#「覚」に「(ママ)」の注記]らないから覚えてるんだかそうじゃあないんだかわからないからしようがないとしてネ」「ほんまにあんたをた
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