様にあの細いこまっかいまつ毛の一本一本がピカピカとかがやいて居る。「マア、きれいだ、何って云うんだろう、私はこんな可愛らしいきれいな人をすきにならなくっちゃあ死ぬほどすきな人に会う事は出来ないに違いない。このまつげ、この髪、この毛、そうしてマア、このバラ色のかおのリンかくと云ったら……」その美くしさに私はも一寸で涙が流れだすほど――まぶたがあつくなったほどその美くしさに感じて居た。
「ようやっとようなった。今あんまり気が立ったさかえ斯うして居たのや、どうにも斯うにもしようのないほど……ナア、涙がこぼれそうやった」
「どうして? あんな事、私が云ったから……でもそんな事考えたってしかたがないんだもの、もうやめて面白くしましょう」「そんな事やないワナ、私達よそのいとはん達から『ほら芸子やまい子や』と云われてばかり居て、――そいであんな遠いところから来たあんたにこなにしたしゅうしてもろうて何やら妙な気がしたさかえ……」まだ十七にもならないで――私はスーッと涙がにじんで来た。だまってお妙ちゃんの弱々した肩をだいて居た。二人とも一言もきかないで赤い鏡かけを見て居ると急にはしご口がにぎやかになって
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