なつかしい仲間
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)級《クラス》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四〇年五月〕
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 友達ということを思うと、私の心にきっと甦って来る一つの俤がある。
 村上けい子さんといったあの子は今どんな風に暮しているのだろうか。やっぱり東京にいるのかしら。それとも、どこかの田舎の町にでもいるのかしら、それとももうこの世の中にはいない人になってしまってでもいるのだろうか。そういう風にこの二十何年間のうつりゆきを、まるで絶えている消息のなかに探るのである。私が小学校の六年だったとき、一年したの級《クラス》に村上さんという生徒がいて、紡績の絣の着物と羽織に海老茶の袴をはいて、級《クラス》で一番背が高かったばかりでなく、成績が大変いいのと、成績がいいのに、その組にいる武さんと云った金持の子が何かというといじめるというので、注意をひかれていた。大柄のおとなしい縹緻《きりょう》よしで、受け口のつつましい村上さんに意地わるをする武さんという娘は、その頃珍らしい贅沢な洋服姿の登校であった。
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