襞のどっさりついた短い少女服のスカートをゆさゆささせながら、長い編上げ靴でぴっちりしめた細い脚で廊下から運動場へ出て来る細面の上には、先生の腹のなかも見とおしているような目があった。
 女学校へ入ってからも、弟がその学校にいたので、私は毎日かえりにはそこへ寄る。いつか村上さんと親しくなって、おばあさんが直ぐ近くの藤堂さんという華族の樫林の裏にいるのがわかってからは、互に往き来もし、日に一遍は会わずにいられないようになった。上の学校への入学試験準備はその頃からもうひどくて、六年生は二学期から、放課後もいのこった。村上さんはどこをうけるの? ときくと、受け口の口元をしずかにほころばして、どこをうけるのか知らないわ、と云うのであった。私はおけいちゃんを自分のいる学校へ入れたいと思った。試験が近づくと、うちで一緒に夜も勉強したりした。おけいちゃんの家は酒樽の呑口をこしらえるのが商売であった。
 女学校の試験なんか出来ない筈はないのに、おけいちゃんはどうしてか通らなかった。小学校の卒業のときは、総代で、東京市の優秀児童ばかりを集めた日比谷の表彰式で、市長からの賞品を貰った。そのとき綺羅を飾った少
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