ころがあって、友達としての良人たちに対する直接の友情にもう一つ女としての微妙なニュアンスを加えているところも面白い。みんな文学の仕事をしていて、それぞれがそれぞれにちがう作風をもっていて、そこまで成長して来た生活の出発は、故郷がちがう以上まるで互に異っている。その三人が、東京が首府だから自然そこに落ちあったというばかりではない歴史の動きにめぐり合いの機会を与えられたということも、女同士の友情、また婦人作者たちの間にある友情として、やはり新しい性質を含んでいるのだと思われる。
 女同士の友情なんてあてにならず、あるかないかも分らないものとされたのは、女が自分の生活の主人でなくて、受け身におこる様々の悲喜を全く自分一個の幸不幸の範囲でだけ感じていた時代のことではないだろうか。女の友情も、今では現実の社会感情としての本質のなかに男が友を得るのと同じ、己を知ってくれる者を知るという要素が多くなって来ていると思う。女の友情の地盤もそれを思えば随分ひろげられもし強くもされて来ているのだ。
 考えてみると、私は本当にいい友達を持っていて、それはありがたいことだと思う。男の友達でも、幾人か親身のつき合
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