とからとめられている様子である。この四人組の一人であった千枝子さんという友達の白山御殿町の家へ、五年生の夏休みの或る夜、私が書きあげたばかりの小説をもって夢中になってかけつけて行った心持も、思い出せばほほ笑まれる。
 世間でいう相当の家庭の娘たちを集めていた女学校などというものは、結婚も所謂相当なところにされ、そのひとたちの生活が全くその規律のうちに運ばれ、やがては憔悴して、儚いところがある。同じ年の卒業生は一つの組で三十二人ほどであったが、そのなかで現在何か仕事をもって生きている人というのは、あるかしら。
 却って、その時代には先生であった方のうち、二人ほどの方々が今も私の先輩として、友達として、つき合いも保たれ、生活感情も流れあっているのは、女の生活に反映してくる社会性の意味で興味ふかいことだと思う。その一人の方には最近清少納言研究の面白い著作がある。女の生活の現実でもやはり仕事が友情を育て保ってゆくところが、私たちをよろこばせもし、また考えさせもするところではないだろうか。
 目白の女子大にいたのは、ほんの一学期であったが、ここで知った網野菊子さんは、今も私の誠意ある友達の一人で
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