らず御かざりのようにしてある箱入娘だと云うことである。
そんな事を思い合わせながら私達はまだ見たこともない人種が来でもするように、
「御めんやす」
と云う声をまって居た。
一週間ほど立って久方ききなれない言葉に下女が目をまるくさせながら私達のまちもうけて居た御客さんが来た。すぐに茶の間に入って、
「はんまに久しぶりやなあ」
と相拶よりさきに云った。御まきさんのうしろに中振袖の絽の着物に厚板の白茶の帯を千鳥にむすんで唐人まげのあたまにつまみ細工の花ぐしを一っぱいさしてまっしろな御化粧に紅までさした御ムスメがだまって私のかわった不ぞうさのあたまを一生懸命に見て居た。その目つきと口元を見て、悪いとは思いながら「あんまり目から鼻にぬけるような人じゃあない」とまるで六十か七十の人のような気持でこんな事を思った。
母とおまきさんとはだれでもがするようにこめつきばったをやって居る。
「ほんまに年ばかり大きゅうてからややさまやさかえ」
こんな事をつけたしにして母にその娘をひき合わせた。重そうな頭をそうっとさげてまっかなかおをした様子を私はつくづくと見て居た。
「サ、百合ちゃんおぼえておいでかい
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