□□」に「(二字不明)」の注記]なら
ひげのおじさんあんたはまあ
何と云うどえらい御方だろう……
  棚のだるまのたなおろし

     かしの木

このはてしない世の中の
 わかいさかんな御方でも
 おとしをとった御人でも
春のめぐみにかがやいて
 黄金のよになるかしの木の
 この木のような勢と
 望をもって御いでなさい

夏に青葉と変っても
 夏がだんだんふけていて
秋のめぐみがこの枝に
 宿ると一所にかしの木は
 又黄金色にかがやいて
  澄んだ御空にそびえます

みんな木の葉が散りました、
けど御らんなさいかしの木は
キリキリシャンと立ってます
骨が目立って岩畳な
幹と枝とをむきだして
男々しくそびえて立ってます。

     八つ手葉裏のテントームシ

手をひろげたよな葉のうらに
チョロンととまるテントームシヨ、
うすい緑の葉の髄に
模様のようにとまってる
チョッとつまんでおいたよな……

黒いところに赤の点、
チョンチョンと散って居る……
「髪のかざりによかろうか
それとも指につけようか
浴衣のがらにゃわるかない」
ふとっちょでせびくであかっけな
十五の娘はこう云った
虫の
前へ 次へ
全46ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング