ゃああるまいかと思われて人達の目は屏風の中を見つめながらふるえて光って居る。いろんな事は段々はげしくすべり込んで来る。赤黄いローソクの灯の上で白い着物の人間が青いかおを半分だけ赤くして狂って居る様子、白粉をぬった娘や若い男の間を音もなくすりぬけすりぬけ歩いて居る青白く光る霊、いくら目をつぶっても話をしても思い出された。人達は気の狂ったあばれ様をするものを引きとめる様にひやりと引しまったかおをして処女の床のわきにいざりよった。意志[#「志」に「(ママ)」の注記]悪くさわぎはますます沢山すべり込んで来る。処女の体をおさえて居なくっちゃあ安心が出来ないほど不安心になって来た人達はお互に顔を見合わせてはその目の中にうかんで居る何と云っていいか分らないほどの恐ろしそうな苦しそうな色をお互に見あっておどろいて居た。いくつもいくつもの霊はその持主の体からにげ出して動かない処女の頭の上におどって居る。
赤い灯はまたたき、テカテカの音はひびいて――処女の体はかたく死んで居る。
私と彼の人
お互にどんな事があってもまるで知らんぷりをして離れ離れの生活をする事が出来ないと云う事は、私達二人
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