ラチラかがやいて
ほんにきれいじゃないかいナ
シャナリシャナリとねって行く
赤いおべべの御猿さん
かつらはしっくりはまっても
まっかな御かおと毛だらけの
御手々をなんとしようぞいの
それでも名だけは清姫さん ほんとにおかしじゃないかいナ
土間に坐った見物の
御重の間につややかな
ながしめくれてまいのふり
泣く筈のとこまちがって
妙なしなして笑い出す
ほんに笑止じゃないかいナ
つまたてて
ソッとのぞいた猿芝居……

     火取虫

ブーンととんで来るきまぐれものよ
御前の名前は何と云う
丸いからだで短い足で
それでたっしゃにとぶ事ネ
私は前からそう思う
ころがる方がうまかろと
むぎわらざいくのそのような
青いせなもつ火取虫
ガスのまわりをブンブンと
羽根のたっしゃをほこるよう
小供がうちわでおっかけた
小さい火取は斯う云った
「何んて云うおなまな御子だろう
貴方に羽根はありますか
これが私しのにげどこで
天のかみさまなんてまあ
細工のうまいこってしょうね」
小さい火取はなおブンブン
ガスのまわりをとびまわる
なんぼたっしゃな火取でも
よっぴてとんではいられない
羽根をやすみょとて床の
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