ょうねえ。
 おもてはそれでも決してかまいません。
 けれどもはてしない悲しみになきぬれて居る霊があるのをお忘れ下さいますな。
 こう申しながらも、私の眼にはしみじみと涙が湧いて居ります。
 あまり夜がしずかでございます故、
 あんまりしとやかな心持になりました故、
 此頃は悲しみのない先頃の貴方様より、どれほど尊いいろいろの事をお考えなすった事でございましょう。
 死と申しますふしぎな事についても、霊と申します事についても。
 お目に掛りとうございます。
 静かに静かにおはなしが致しとうございます。
 達者で居る私は、毎日本をよみながらものを書きながら、どれほど考える時間の少ないのを不安がって居るでございましょう。
 夜は人間を賢くすると申します。
 私はこれから先、もっともっと書きつづけとう存じますけれどもお目がつかれるのが相すみませんからさようならと申しましょう。
 けれども私は、若し御ゆるし下さいますならば、いつまでもいつまでも心置きなく物を申しあげられる人になりとうございます。
 どうぞ私が気まぐれで申しあげるのでない事をお信じ下さいませ。
 お休み遊ばせ、よいお夢を。
 あ
前へ 次へ
全5ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング