った。「私が一人で犯行をやったと平山検事に述べたが、神崎検事になってから共同だろうとせめたてられ、共同と主張してしまった。その上神崎検事からは、自由法曹団を相手にまわしていくらでも闘ってくれる弁護人がいるといわれ、前に頼んだ今野、小沢両弁護人さんたちに会わせる顔がなくて解任届を出した。今でも今野、小沢両弁護人に頼みたい。」と。
 これから数十回継続されてゆく立証段階で、よび出される百二、三十人の証人と、林弁護人の弁論中にあらわにされた検事団の偽証罪をかざした証人操作法とは、どのようにからみ合い、どのような情景を法廷にくりひろげてゆくだろうか。世論が公正に監視をつづけなければならないかなめ[#「かなめ」に傍点]は、これからほぐされて来る。
 ドレフュス事件をいうとき、ゾラがそれにかかわって闘ったことを侮蔑的に見る人はない。アナトール・フランスの思想の発展のモメントが、この事件に連関していることを、近代フランス文学は少くともきまりわるがってはいない。そのドレフュス事件にしても、現に新聞があることやないことをかきたて一般の反感を挑撥していた当時は、セザンヌが、そんなことに首をつっこんでいるゾ
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