が何と云おうと私は最後まで真実を守って死ぬのだ。」「もし仲間の人たちに清水もやったということをいわれてそこで殺されるならば、仕様がない。」「もし清水がやったという人があるとしたらば、それはやっぱり恐怖にとりつかれたんでしょう。いかに他の人が何と云っても私は嘘はいえない。もし自供した人々が情状酌量されて、真実を主張して闘った者が極刑を課せられるならば止むを得ない。しかし人間はそこまで悪くはできていないだろう。何時かは清水はやっていないといってくれるだろう。私は泉川検事に最後に血涙をしぼって云った。」「二十三日の日に私は、血涙をしぼって否認した。」この間泉川検事は、君は九分九厘不利だという言葉を執ようにくりかえした。治安維持法時代から特高として働いてきたツゲ事務官(柘植)は、尾崎秀実の例をひいて「彼は遂に刑場の露と消えた。彼は真実に生きていた。最後まで真実を主張して自分の真理に生きた。そうして彼は牢獄において手記を残して行った。お前は小説に書かれるか。そこまで私は云われました。」清水被告は、彼の詳しい、情熱のこもった陳述を次のようにむすんでいる。「三鷹電車区の中には、たとえかけだしの党員で
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