しあげたい。僕は弁護人諸君はただ単に弁護人だけにとどまらず、本当に日本の民主主義をまもり、憲法を擁護する人民のえらばれた検察官としてあの被告たちの真相をてってい的に究明してそして自分の前に謝罪せしめるように、どうかわれわれに御協力願いたい。」
 被告外山勝将(二五)、もと運転手、同分会執行委員「被告に対してもあらゆる方法をもっておどかし、例えば町のゴロツキの如くお前は検察庁に喧嘩をうるつもりか。それなら俺たちはお前を法律で必ず殺してみせると暴言をはいておどかし、最後には、もしお前たちが事実をいうならば七年の刑が三分の一になって、又社会にでて活躍する時がくると誘惑」したと陳述した。八月十五日の深夜に、事実無根の自白をおこなった被告横谷武男(二七)、もと技工、同分会闘争委員が、どのようにして数名の検事たちから彼の親思いの気持と共産党員として党組織を信頼している感情を逆用されて、理性の混乱につきおとされたかということは、公判廷でとられた彼の陳述をふくむ録音が翌日放送されて、多大な感銘を与えたことによっても明瞭である。十二名の被告のうち、最年少者である清水豊(二〇)、元整備係、同分会執行委員は
前へ 次へ
全35ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング