二人の若い日本の娘をつれて乗り合わせていた。娘たちはありふれた洋装であるが、ありふれないこととして盛にガムをかんでいる。兵士は二人ともラテン系のアメリカ人で、カールした髪が、帽子の下からはみ出ている。彼等としては、普通に国で女の子と喋る時のように喋っているつもりであろうけれども、その栄養のよい体の楽々とした吊皮への下りようや、何か云っては娘の顔を覗く工合が、周囲の疲労し空腹な男女の群の中にあって、どうしても、独得な雰囲気をなしているのであった。
ふと見ると、その一団の斜め後に、二人の青年が佇んで、凝っと細々と、変化する兵士と娘たちの声やポーズに注目している。十八九歳の二人で、実直な勤労青年であることが一目で見とれる人々であった。その二つの若い日本の青年の面に浮んでいたその時の表情を、わたしは忘れ難く感じている。どちらかと云えば単純なその二つの顔は、彼等が言葉にも表現し得ない程、複雑な、云うに云えない青年としてのこころもちを反映していた。若々しさが、直接に、その若い感性にとっては一つの漠然たる苦悩として感じられている顔つきであった。
この表情は、これほど真率に、凝集して現れているのを
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