迫の影響と結果を見ようとされていない。ゆうべ(八月一日)NHKの街頭録音は、「政党は選挙公約の実現に努力したか」という題目であった。「はい、そこにいらっしゃるお若い方」と指されて答えた人は自由党支持者であったが、意見として、自由党は少し言論の圧迫をしすぎると思います、と答えた。自由党の支持者で、同じ意見をのべた人がもう一人あった。常識にうつっているこの現実は、作家たる火野葦平によって、おのれとともに「昔にかえった」姿としてだけとりあげられている。
 民主的出版物の編集が、ひとり合点で、不馴れであるし拙劣である上に、第三者に真の努力を感じさせるだけの迫力を欠いているということは、出版文化委員会の席上で、しばしば発言されたことであった。出版の仕事は客観的な現実のうちにさらされている事業だから、特殊なえこひいき[#「えこひいき」に傍点]をして弁解になるものではないし、「立場」の正当性ばかりで成立することでもない。それはそれとして自身の存在をたたかい、確立をかちとらなければならない。すべての人民の事業はきびしく同じ現実にさらされている。
 その点では、民主出版事業の自己批判がたゆみなくもとめら
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