う風には考えていない若い女のひとたちも亦決して少くない。自分たちを結婚にまで導いてゆくだけの共感、愛情、人生への態度の共通性を眼目として、そういう対手を待ち求めているひとも多い。
更に、職業をもって自活して暮している若い女のひとたちの結婚に対している心持は、相当複雑であると思う。或る人は何か一人で風雨にさらされているような明暮れに疲れを感じ、同じような境遇の対手を見つけて互に寄り添ったところのある生活に入りたいという希望をもっている人もあるだろう。ただ寄り添うばかりでなく、二人よったことで二つの人間としての善意をもっと強いものにし、世俗的な意味ばかりでなしに生活の向上をさせて行きたいと思う人々も多いに相異ない。結婚によって自分の職業もやめ、一躍有閑夫人めいた生活に入りたいという希望をもっている人が、今日のような浮動した社会事情の時はその夢を実現する可能が意外のところにあるのかもしれない。そういう人生の態度を認めている人たちは、周囲からの軽蔑を自分の心には嫉妬だと云いきかせることも平気であろうし、現実としてはその身のまわりに金銭や地位に対して卑屈になり得る人たちを賑やかに集めることも出
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