さに夜の闇の中に光って居るダイヤモンドの様にキラメイて居た。
 それから又男は一日に一度はキッと女の家の格子をあけた。一日中居る事も夜更けてかえる事もあった。けれ共女が男にさわる事をゆるしたのはそのつめたくて美くしい手の先だけであった。
 若い男の血を目に見えない形に表れないところから吸いとって美くしさはますます女の体にまして来た。女のそばに近よる男は自分の体のやつれたのは知らないで段々美くしくなりまさる女を仰ぎ見て居た。
 女は二十になった。
 男は、
「私は、この頃まるで病んだ様になってしまった。大変やせた、自分でも気のつくほどだもの、私は日ましにやせながら日ましにお前のわきをはなれて居られなくなった」
 うるんだ目つきをして斯う云って居た。
「私達の一番美くしい心ばかりを集めて私達の一番立派な血ばかりを集めてお前は日ましに美くしくなって行くんだネエ」
 こんな事も云った。
「私はお前に一番好いところを捧げつくしてしまったんだから、キッともうじきに死んでし舞うだろう。私は心から御前を思ってたけれ共お前は私を自分の美くしくなる肥料につかったっきりなんだものネエ、見こまれたと知ってにげ
前へ 次へ
全28ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング