分の頭に萌えて居る計画を話した。
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「ウン、そりゃあよかろ。
 そんな訳合ならよく私も気をつけてやろ。
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 お関は母親に二人の癖なり顔立ちなり身ごなしなりを非常な正直さと熱心で比較させた。
 如何にも重三の顔は土臭かったけれ共お関とはまるで異った骨骼と皮膚とを持って居た。
 離れたっきりで居たおかげで何一つとして同じ癖は持って居ない。
 まるで赤の他人同様だと見えたのである。
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「ほんに好い都合じゃ。
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 満足した囁きが又繰返され、お関は喜悦と一種の好奇心に胸を一杯にして機嫌よく帰って来た。
 それから後も屡々山田の主人は養子の事を云って居ると、お関が行って来てから三月目にY県の実母から手紙をよこして、
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「矢吹さんの息子が二十六になって居て、次男でもあるしするからどこぞへ行きたいと云うてなさるが。
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と云って来た。
 お関は平静な気持で、
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「まあ矢吹の重ちゃんが其那にもなりましたかねえ。私の家に居た頃はまだほんの水っ子だった
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