体は震える程ねたましかった。
お関は様々の混乱した感情に攻められて何事も落付けない日を続けて居た。
けれ共間もなく恭吉は狂気の様な熱心と執拗さで発表された四十を越した女の爛れた様な羞恥のない熱情の下で喘がなければならなかった。
勿論、お関に対して恭は或る強味は持って居たのだけれ共、テラテラとした日の下で弛んだ筋肉のだらしなく着いた体を曲げたり伸したりして、其の獣の様な表情のある顔に大胆な寧ろ投げ遣りな影の差して居るのを見ると、胸の悪くなる憎しみと、侮蔑とを感じないわけには行かなかった。
恭吉は徹頭徹尾お関を馬鹿にして居た。
お関は恭吉に対して殆ど極端な嫉妬と不安とを持って居たにも拘わらず、不思議な悪戯者が何処か見えない所から二人を意地悪く操って居た。
お関自身身を離れない仇敵として此上なく憎んで居る自分の調わない容貌と傾いた年齢とは此の時無意識の好意ですべての事の上を小器用に被うものとなった。
山田の主人はその間中も恭を見る毎に自分の実子の無い淋しさをお関に訴えた。
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「俺にも恭位の息子が有ればなあ。
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と云う時の彼は実に落着
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