関の心の中には口に云い表わせない悩ましさが湧き上った。
 自分が受取ってかくして仕舞った二通の※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子からの手紙の事も、又此れから二月もの間自分の意志[#「志」に「(ママ)」の注記]を焼く様な事許りを二人でするのだろうと思ったりして、どことなく心《しん》のある様な身のこなしを仕ながらお久美さんに許りは変らない上機嫌の顔を見せて居る※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子が腹立たしくて腹立たしくてならなかった。
 まして、久々で東京から来たのに手土産一つ持って来ない事も気を悪くさせる種の一つになって居た。
 お関は年寄と話しながら絶えず二人の方を視て居た。※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子が今年の正月頃用事で五日程来て居た頃にはまだ髪なんかも編み下げにして着物の着振りでも何でもが如何にも子供子供して居たのに、急に肩付がしなやかになって紫っぽい薄地の着物を優々しく着てうっすりお化粧をしてさえ居る今の※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子を見ると、お関は堪えられない程のねたましさと憎みを感じて居た
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